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香川由美さん

NPO法人患者スピーカーバンク理事長・公衆衛生学修士

1型糖尿病と共に、私らしく前向きに人生をエンジョイ

インスリンポンプとの出会いが人生の転機に

9 歳で1 型糖尿病を発症して以来、常に血糖値を意識しながら生活を続けてきました。「ちゃんと血糖値をコントロールしていれば、普通の人と同じ生活ができるよ」。そう言われて15 年間、懸命にがんばりました。当時の私にとって、血糖値は医師や親に報告するための“ 成績表”。自分の評価に直結する数字だったように思います。

しかし当然ながら、体は機械ではありませんから、血糖値を厳密に管理することは簡単ではありません。思うようにコントロールできずに落ち込むことも多く、「自分の体なのに自分の手には負えない…」という無力感が募るばかり。同級生が就職活動を行っている時も、私は日々の体調管理で精いっぱい。働く自信などなく、何か新しいことにチャレンジしようという気持ちにもなれませんでした。自分の病気に圧倒されて、完全にキャパシティーオーバーの状態でした。24 歳のとき、そんな私の人生に大きな転機が訪れました。二人三脚で応援してくれる医師、そして共にがんばる患者仲間との出会いをきっかけに、インスリンポンプ療法を始めました。それからです、今までの「血糖コントロールのために我慢する生活」から、「やりたいことをするために、血糖値をマネージする生活」へと変わったのは。“ 病気と共に、前向きに楽しく生きよう”、そう思えるようになったのです。

人生のハンドルを握るのは自分! 生きる姿勢に変化

インスリンポンプを導入したことで、格段に体調管理がしやすくなったことが大きいと思います。今まで躊躇していた友達とのショッピングやカフェでのティータイムも、心から楽しめるようになりました。こうして小さな成功体験を積み重ねていくことで、「人生のハンドルを握っているのは自分」という意識を持てるようになっていきました。 確かに1 型糖尿病は、私の人生を大きく変えた病気ではありますが、インスリンポンプもまた、そんな私の生きる姿勢を変えてくれた存在。私にとってはただの器械ではなく、自分を自由にする手段であり、元気に幸せに生きるための武器。味方であり、相棒であり、ベストフレンドでもあります。

現在はNPO法人患者スピーカーバンクで、さまざまな病気の患者さんの声を世の中に届ける活動をしています。さらに大学院の医学博士課程(社会医学専攻)に進み、「患者の語りを社会に生かす」ために、アカデミックな場でも発信をしていく予定です。この両輪をうまく回して、自分の経験を社会に還元していくことが今の私の目標です。昔の私のように苦しんでいる患者さんが、自分らしく前向きに生活できる社会の仕組みを作れるよう、私なりにお手伝いを続けていきたいと思っています。