女性外科系医師応援プロジェクト

消化器外科医師がママ目線で企画した親も子も楽しみながら学べる講習会

コヴィディエンジャパンは2014年より、女性外科系医師応援プロジェクト(WOMEN IN SURGERY EMPOWERMENT PROJECT(WISEP)に取り組んでいます。その一環として「消化器外科女性医師の活躍を応援する会」との共催による「第2回 Master Class for AEGIS-Women」を、昨年に引き続き2019年2月2、3日に開催しました。全国から外科系医師29人(男性7人、女性22人)とお子さん19人が参加するなか、夫婦での参加や男性医師が子どもと一緒に参加するなど、2年目にして予想以上の広がりを見せています。

大腸や胃のスペシャリスト4人の講師による、腹腔鏡外科手術の技術向上を目指した託児所付き講習会をメインに、外科医師としてのキャリアプランを仲間とともに考えるワークショップも開催。さらには、同行する子どもたち自身も腹腔鏡(デモ機)操作を体験できるキッズセミナーも同時開催するなど、親子で楽しめる盛りだくさんの企画が人気です。単に託児所を設置するだけでなく、「子どもたちにも楽しい時間を」という参加医師の想いを両立するため、コヴィディエンジャパンも全力でサポートしています。

キッズセミナーでは、鉗子を使ったビーズ運び(らぱびずゲーム)や縫合結紮タイムトライアルなど、時間と技術を競う個人戦も実施。帰宅後も親子でキッズセミナーの話題で盛り上がるほど充実した時間となりました。

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年齢、性別、立場を越えたディスカッションはネットワークづくりにも

会員同士のネットワーキングは、参加医師にとっても期待されているコンテンツのひとつ。「外科医師のキャリアプランを考える」をテーマとしたグループディスカッションでは、「子育て中の女性外科医師に外科的手技をどのように習得させるか」「術者として成長させるために必要なことは何か」「周りとの軋轢を防ぐために必要な工夫は」の3点について話し合い、一部の手術のみを分けて担当するパート制の是非やチーム主治医制などについて意見交換しました。

消化器外科の女性比率は約6%*。専門医となると2%*と外科の中でも極端に低く、同じ悩みを抱える仲間や、先輩医師たちと率直な意見を交わすこと自体が貴重な経験となります。参加者からは「同じ境遇でがんばっている女性外科医師に会えて元気をもらった」「女性医師だけでなく男性外科医師とも協力できる環境作りを考えることができた」など、全国の仲間と意見や情報を交換することで、仕事のモチベーションが上がり、現状打破への新たなアイデアが沸くという意見が寄せられました。

 

 

男女の区別なく、働きやすい環境をつくるには?

 

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東京大学大学院医学系研究科 消化管外科学准教授
野村 幸世先生
消化器外科女性医師の活躍を応援する会 会長
(AEGIS-Women)

Q:「消化器外科女性医師の活躍を応援する会」とは
A:消化器外科における女性医師の割合はわずか6%*。専門医は2%*、指導医に至っては1%にも満たない**のが現状です。消化器外科医師をめざしても、出産・育児との両立の難しさから、途中で夢を断念せざるを得ない女性医師が実に多いのです。そこで、女性消化器外科医師が楽しく、意欲的にキャリアを積めるシステムを作ろうと、メドトロニック(コヴィディエンジャパン)の協力を得て、2015年に「消化器外科女性医師の活躍を応援する会」を立ち上げました。現在は、臨床・研究および手術手技向上のための支援、情報交換、教育啓発活動、会員同士の親睦を深める活動などを行っています。

Q:消化器外科はなぜ女性が少ないのか
A:「主治医が24時間365日患者に尽くし、よい医療を提供すべきである」という考えが根強い上に、手術時間が長く、緊急手術などの呼び出しや当直は当たり前。また、外科のなかでも特に“男社会”の傾向が強いのが消化器外科です。内視鏡手術歴が専門医取得の必須条件であるにも関わらず、「女性というだけで手術の機会を与えてもらえない」「同級生の男性の方が、明らかに手術件数が多い」というのは、今も昔もあまり変わりません。その上、妊娠・出産でブランクがあったり、時短勤務中だと、さらに手術に携わる機会は減るわけです。手術はできない、正しい評価もされないとなると、モチベーションが上がらないのは当然で、「育児を優先したい」と非常勤勤務を選択したり、現場を離れていく医師も多く見てきました。

Q:野村先生がこの活動に力を入れる理由とは
A:出産や子育てを理由に、性別によって機会の差が生じる環境は絶対に間違っているという強い想いがあるからです。ただ、術後に自分が執刀した患者さんの具合が悪くなれば、すぐに行って診て差し上げたいと思うのが消化器外科医師でもあります。実際、行くなと言われるのも苦痛なのです(笑)。今後は、そのような文化も変えていかなければならないと思っています。また、子育て中の女性医師も、努力すれば普通に専門医を取れる環境を作ることも目標です。

Q:今回、男性医師の参加が増えたことについて
A:子育て中でも技術取得のトレーニングができる機会を作りたいという目的で始めた会ですが、今年はお子さんと一緒に男性の先生が参加されるなど、新たな動きも出てきました。当会の趣旨に賛同してくださる男性医師が増えることはとてもうれしいですね。女性の働き方改革を進めるには、男性の協力が不可欠です。子育ては母親だけでするものではなく、父親も参加しないとうまくいきません。男性も子育てに参加し、ご自身の人生観や価値観などを伝えることはとても大事ですから、今後も男女の区別なく参加でき、むしろお子さんから「行きたい」と言ってもらえるような、楽しい会にできたらいいなと思っています。

Q:医療現場に限らず、各職場で男女共同参画、ダイバーシティに取り組む上で、必要なことは
A:一つは物を言える立場に、ある程度の割合で、女性を登用すること。また、改革を推進する立場の方が、自ら率先して家事や育児に参加することも大事です。日本では、女性管理職の割合を決めても、肝心 の女性が手を上げないとよく聞きます。ある研究によると、100%の自信がないと仕事を引き受けないのが日本人女性だそうです。驚きだったのは、日本人男性は50%でも手を上げることでした(笑)。日本の女性には「100%できる確信がなくても、引き受けていいんだよ」とぜひお伝えしたいですね。

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*出典:厚生労働省   平成26年医師・歯科医師・薬剤師調査
**出典:野村幸世, 冨澤康子, 大津洋, 小川朋子, 柴崎郁子, 島田光生, et al. 日本医学会分科会における女性医師支援2015年    第3回アンケート調査. 日本外科学会雑誌.
2017;118(6):668-72.