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ONE PATHOS
Interview Vol.1
東京都多摩エリア
Ⅲ. Door to Puncture
(来院から穿刺まで)

東京都立多摩総合医療センター
脳神経外科 医長

太田 貴裕 先生

1.Door to Puncture時間を短縮するための取り組み

 血管内治療において、発症から再開通時間が短いほど転帰良好例が増加することから、来院から穿刺までの時間(Door to Puncture)の短縮が求められ、以前は120分が目標の目安とされていたこともありました1)。また、画像撮影から穿刺までの時間(Picture to Puncture)についても、90分以内が血管内治療の目標時間として提唱されています2)。2015年the Society of NeuroInterventional Surgery (SNIS)はCSCにおける治療時間目標として、来院からCT angiographyまで20分、Door to Punctureを60分、そして来院から再開通まで(arrival to recanalization)を90分以内という数値を提唱しています3) また血管内治療における目標時間に関して、HERMES study では、画像撮影から動脈穿刺まで50 分、来院から動脈穿刺まで 75 分、来院から再開通まで110 分が妥当であると述べられています4)。これらはかなり理想的な時間目標ですが決して実現不可能な目標ではありません。

 そこで、当院では院内連携体制を強化し、救急患者受け入れの整備、治療手技の統一、治療チームスタッフへの教育の充実などを図りながら、Door to Puncture時間の短縮に努めています。現在当院での目標は来院から穿刺まで60分、画像撮影から穿刺まで45分以内とかなり時間短縮ができています。

 まず、救急患者搬送の連絡が入ると来院前に救急外来(ER)看護師、MRI室、放射線科技師などへの事前連絡を徹底します。そして、再開通療法の対象患者である場合には2名以上の医師がスタンバイし、搬入後にひとりの医師は救急隊から話を聞き、他の医師は患者対応にあたるなど、複数の医師で手分けしながら診療を進めます。また、ERにはt-PA静注療法の説明書と同意書を一式準備し、書類手続きの時間短縮にも目を向けています。クレアチニン、血糖、PT-INRについては迅速キットの導入は必須です。さらに、脳血管撮影室には血管内治療パックを作成して使用する消耗品類を準備するなど、血管内治療の準備時間を短縮するための工夫も行っています。

 また、院内で来院から血管内治療までの再開通療法のフローシートを作成し(図5)、検査から治療の流れや準備態勢などを共有することで、経験の浅い若手の医師やコメディカルスタッフでも準備が行えるような体制を整えています。加えて、血管内治療を行うための基本的なデバイス(ガイディングカテーテル、マイクロカテーテル、ガイドワイヤーなど)と再開通療法に必要なデバイスは、常に決まった場所に準備されています。

 さらに、治療チームスタッフのレベルを向上させるための教育も欠かせません。そこで、ER・救命センター看護師、病棟看護師、またER で初療を担当する研修医などを対象に、新しいデバイスやエビデンスなどについて最先端の情報を常に身に着けるため、月1回程度の定期的な勉強会を開催してきました。

図5

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2.必要最小限の画像撮影

 Picture to Puncture時間を短縮するためには、画像検査を必要最小限で行う必要があります。単純CTは出血性病変を除外し、早期虚血病変の有無を確認することができます。閉塞血管の評価をCTで行うかMRIで行うかについては議論のあるところですが、各施設の状況に応じて検討する必要があります。可能であればCT灌流画像が望ましいのですが、当院では施行が困難です。しかし、いつでもすぐにMRIを撮影することが可能なため、閉塞血管の評価はMRAで行っています。

 2016年4月からは頭部CT検査をスキップし、まずMRI(DWI+FLAIR)/MRA検査を行う方針へ切り替えさらに時間を短縮しています。MRI検査は約5分で終了します。CT、 MRIのいずれを優先するかは各施設でどれだけ迅速に検査できるかに影響されますので一概にどちらがよいとは言えないと考えます。単純CT→CT灌流画像、あるいはMRI/MRAのどちらかで治療適応の評価をすべきと考えます。

 また、他施設から転送された場合は、発症から時間がかなり経過しているケースも多く、搬送中に梗塞巣が広がっていたり、逆に再開通していたりするようなことも考えられます。これを確認するためには、搬送後に再度MRIを撮影する必要があります。ただし、発症から30分、60分以内と早期に搬送されたような場合は、ERから直接血管撮影室に運びそのまま治療を開始することもあります。
 

3.さらに時間を短縮させるための課題

 当院では、一次および二次救急患者を診療する救急外来である「東京ER ・多摩」と、三次の重症患者を扱う「救命救急センター」により、救急部門が運営されています。最初にERに搬送された患者でも、結果的に重症度が高い場合には救命救急センターへの入室となることもあります。急性期脳梗塞患者のDoor to Puncture時間は、どこの部門に救急隊が患者を搬送したかによって差が生じる場合があります。ERでは救急科の研修医が診るケースが多く、救命救急センターでは最初から救急救命医が診療を行います。つまり、搬送後の初療を担当した医師によって、その後の穿刺までの時間に違いが生じるということです5)。このため、今後はいかに救急部門間の密接な協力関係を構築しながら、時間短縮を図っていくかが課題となります。

 また、医師のさらなるレベルアップも重要な課題のひとつです。血管内治療では、術者と第1助手の他に後方でバルーンガイディングなどの準備を担当する医師、計3名の医師が揃うとスムーズに施行することができます。3名の医師がすべて血管内治療専門医であれば理想的ですが、そのような施設は少ないでしょう。第1助手や後方支援の医師は非専門医でも対応可能であり、これらの医師のレベルが向上することで、準備にかかる時間がかなり短縮できると思われます。そして、レベル向上のためにはまず各施設内で使用するデバイスを統一し治療方針も決めておき、血管内治療の施行例数を増やし、経験値を上げていくことが重要だと考えています。

 さらに、血管内治療についてコメディカルスタッフにも興味を持っておいてもらうことも大切です。当院では、血管内治療によって回収された血栓を見せたり、回復した患者さんの状態について情報を共有したりするなどして、治療チームスタッフ全員のレベルとモチベーションが向上するように努めています。
 


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<引用文献>

1)  Sacks D, et al. J Vasc Interv Radiol 2013;24:151-163.

2)  Sun CH, et al. Circulation 2013;127: 1139–1148.

3)  Jayaraman MV, et al. J Neurointerv Surg 2015; 7: 316-321

4)  Saver JL, et al. JAMA 2016;316:1279-88

5)  Ota T,et al.Neurol Med Chir (Tokyo) 2016;56:725-730.