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ONE PATHOS
Interview Vol.1
東京都多摩エリア
Ⅳ. Puncture to Recanalization
(穿刺から再開通まで)

東京都立多摩総合医療センター
脳神経外科 医長

太田 貴裕 先生

1.Puncture to Recanalization時間について

 近年、ステントリトリーバーを用いた血栓回収療法が普及し、急性期脳梗塞に対する血管内治療は劇的に進歩しています。当院では、急性期脳梗塞の再開通治療に要した時間について、ステントリトリーバー導入前後での比較を行いました1)。その結果、穿刺から再開通まで(Puncture to Recanalization)、ステントリトリーバー導入前は112.8 分であったのに対し導入後は64.7 分に短縮されました。また、導入前と導入後で、来院から再開通までの時間は210.8 分から140.6 分、発症から再開通までは322.0 分から271.3 分にそれぞれ短縮されていることがわかりました。最近では治療開始までさらに時間短縮が得られています。

 このように、ステントリトリーバーの登場によって穿刺から再開通までの時間はかなり短縮されるようになりました。現在では穿刺―再開通が30分以内が目標時間となっています。一方で、これ以上穿刺から再開通までの時間を短縮することは困難であり、発症から再開通までの時間を短縮するためには、発症から搬送、来院から穿刺までの時間をいかに縮めていくかが今後の課題となります。言い換えると、発症から再開通までの時間短縮のために、発症から来院そして穿刺までの時間を縮めることが必要です。それにより穿刺から再開通までの治療では急ぐことなく確実に実施することが、今後求められる課題となります。
 

2.心原性脳塞栓症とアテローム血栓性脳梗塞の鑑別

 日常診療において、搬送されてきた急性期脳梗塞が心原性脳塞栓症かアテローム血栓性脳梗塞か、病型の鑑別に難渋するケースがあります。当院では、まずは心電図で心房細動の有無を確認しています。また、最近ではBNPやDダイマーが心原性脳塞栓症の血液バイオマーカーになることが指摘されているため、採血検査によりこれを確認するようにしています。さらに、全身の動脈硬化の状態も観察し、閉塞部位以外にも動脈硬化巣が多くみられればアテローム血栓性脳梗塞、そうでなければ心原性脳塞栓症を疑います。鑑別が難しい場合には、基本的には心原性脳塞栓症だと考えて治療を進めるようにしていますが、ステントリトリーバーを使っても速やかに再開通しない、またはすぐに再閉塞してしまうような場合は、心原性脳塞栓症ではない可能性も考慮し、血栓吸引カテーテルを使用する、あるいはバルーン拡張術(PTA)を行うなど治療戦略の変更を考慮する必要があります。

3.Tandem lesionへの対応

  時に、頸部内頚動脈狭窄症とそれによる血管原性梗塞(artery to artery embolism)である頭蓋内主幹動脈閉塞を来すような重複病変(tandem lesion)に対して、血管内治療を施行する場合があります。このようなtandem lesionに対する急性期血行再建術としては、頸動脈へのステント留置と頭蓋内血栓回収療法のどちらを先に行うかについて、議論が分かれるところかもしれません。最近の考え方としては、頭蓋内の治療が優先されるケースが多いようです。何故ならば、頭蓋内を先に再開通させることで、前交通動脈あるいは後交通動脈を介した側副血行路からの血流が期待されるためです。

 また、アテローム血栓性の頸動脈狭窄は再閉塞のリスクが高いことから、ステント留置が必要となることもあります。しかし、頚動脈ステントを留置すると抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)が必要となり出血リスクが高まるため、tandem lesionに対する治療法としては悩ましいところです。ステントを留置せずに経皮的血管形成術(PTA)のみでの対応も考慮されますが、プラークが破綻してそこに血栓が形成されて閉塞したような病態には、PTAのみでの治療は困難です。一方、頻度は高くはないものの、頸動脈解離によって血栓が頭蓋内に飛んだtandem lesionもあります。このような場合には、ステントは留置せずにPTAのみで頸動脈解離部の治療を行うことも可能です。
 

4.再開通治療の実際

 再開通治療では、ガイドワイヤー、カテーテル、血管内治療用デバイスなどのさまざまなデバイスが使われます。このデバイスの選択については、すべて術者の好みを優先して使い慣れているものを使うことを勧めています。血管内治療用デバイスについては、血栓を吸引するPenumbraシステムが使い慣れている医師もいれば、ステント型血栓回収デバイスであるステントリトリーバーを好む医師もいます。

 私たちは、手技がシンプルなため、若手医師でも簡便に使うことができるステントリトリーバーを優先して選択しています。

 ステントリトリーバーについては、EXTEND-IA試験2)、SWIFT PRIME試験3)、REVASCAT試験4)などのRCTの結果が2015年に報告され(図6)5)、t-PA静注療法の治療成績を上回るエビデンスが確立されています。このため、今後さらにステントリトリーバーによる再開通治療が広く普及されることが期待されています。しかし、現状ではこの治療が実施できる施設は限られているため、専門医の早期育成により対応可能施設を拡大することが、喫緊の課題となっています。

図6 HERMES解析結果(文献5より作図)

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<引用文献>

1)     太田貴裕、他. NKC 2016;1:8-13.

2)     Campbell BC、et al. N Engl J Med. 2015;372:1009-1018.

3)     Saver JL、et al. N Engl J Med. 2015;372:2285-2295.

4)     Jovin TG、et al. N Engl J Med. 2015;372:2296-2306.

5)   Goyal M、et al. Lancet. 2016;387:1723-1731.