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ONE PATHOS
Interview Vol.1
東京都多摩エリア
Ⅴ. 再開通治療後の
フォローと今後の課題

東京都立多摩総合医療センター
脳神経外科 医長

太田 貴裕 先生

1.循環器内科との連携

 再開通治療が終了すると、次は再発防止に目を向けた治療を継続していく必要があります。当院では、血管内治療によって再開通に成功すると、その日のうちに循環器内科に診察を依頼するようにしています。心臓に血栓が存在していると、その血栓が脳に飛びまたすぐに脳梗塞を引き起こす危険性が高まります。そのため、循環器内科では経胸壁心エコーで血栓の有無を確認することを基本としています。また、経胸壁心エコーでは骨や肺が障害となって見えにくい場合がありますが、このような場合は食道内から検査する経食道心エコーで評価するケースもあります。ただし、経食道心エコーでは超音波を出すプローブを飲み込み、喉の表面麻酔が必要になることなどから、実施が困難な患者さんもいます。

 また、脳梗塞の病型や原因を正確に判断するためにも、循環器内科における評価は必須となります。
 

2.地域における医療連携によるフォロー

 脳卒中は、急性期から回復期そして在宅生活まで、長期にわたって療養が必要となる疾患です。そのため、急性期の再開通治療後のフォローには、地域における医療連携が欠かせません。

 まず、他施設から患者さんが搬送されてきた場合は、再開通治療終了後に搬送元の施設に治療内容や病状についてフィードバックする必要があります。搬送時の所見と治療結果を照らし合わせることで、搬送元の医師やスタッフの脳梗塞に対する診断能力や経験値が向上されることも期待できます。

 また、再開通治療後は搬送元やかかりつけ医に逆紹介したり、リハビリテーションを行うための回復期病院に紹介したりしながら、地域全体で急性期治療後の患者さんをフォローしていくことが大切です。
 

3.再開通治療の今後の課題

  ステント型血栓回収デバイスの登場により、急性期脳梗塞に対する再開通治療は劇的な進歩を遂げています。しかし、この治療法を普及させていくためには、血管内治療を行うことができる医師数が絶対的に足りません。日本では脳血管内治療は多くの場合脳外科医が担当していることが多いです。1人でも多くの脳外科医が手技を習得する必要があることは言うまでもありませんが、脳外科医だけでは限界があります。そこで、近い将来は内科や神経内科の先生方にも、血管内治療の手技を習得し治療に参画してもらうことに期待をしたいと思います。

 今後、出血リスクが全くない抗血栓薬などが登場しない限り、血管内治療は急性期脳梗塞の中心的な治療法であることは間違いありません。このことを内科や神経内科の先生方に理解してもらい、ひとりでも多くの先生方に興味を持ってもらえるような取り組みが必要ではないかと考えています。
 

4.今後のTama-FASTを通じた地域での取り組み

 多摩地区においては、引き続きTama-FAST(多摩急性期虚血性脳卒中治療フォーラム)を通じた情報提供活動と地域連携の構築に注力していきます。現状では、Tama-FASTへの参加者の多くは、血管内治療を実施している施設の脳血管内治療専門医や脳外科医です。今後は、未実施施設からも多くの先生方に参加してもらいたいと思います。また、脳血管内治療専門医や脳外科医だけでなく、内科や神経内科の先生方にも参加してもらえるような研究会にしていきたいと考えています。そのために、“内科医が実施する再開通治療”などもテーマとしてプロクラムに組み込んでいます(図7)。最近では参加者の職種も増えてきています。リハビリスタッフや放射線技師、看護師の参加が増えてきました。前回のTama-FASTでは放射線技師からの一般演題も行っています。医師だけでなくコメディカルスタッフ、救急隊員らにも興味を持って参加してもらえるような研究会に発展させることができれば理想的です。

 加えて、Tama-FASTを通じて地域での連携が強化されてきたことから、2017年4月より多摩地区での再開通治療施行例の全例調査(TREAT)を開始しました。これにより、救急搬送システムはどのように機能し各エリアによってどのように患者さんの治療機会に差があるのか、救急搬送体制から治療法が予後にどのような影響を及ぼすのかなど、大変貴重なデータが得られることに期待をしているところです。

 急性期脳梗塞に対する再開通治療は、時間との勝負であり、1人の医師、1つの病院内で24時間365日完結できる治療ではありません。脳血管内治療医、脳神経外科医、内科医、神経内科医、かかりつけ医、コメディカルなどが地域ぐるみで連携を取って行っていく必要があります。今後も、Tama-FASTがその一助となればと考えています。