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ONE PATHOS Interview Vol.2 兵庫県但馬エリア Ⅲ.急性期脳梗塞治療における
時間短縮への取り組み

公立豊岡病院
但馬救命救急センター センター長

小林 誠人 先生
脳神経外科 医長
(30年4月以降 神戸大学医学部付属病院 脳神経外科 助教)
今堀 太一郎 先生

1.ドクターヘリによる発症から治療までの時間短縮
(小林 誠人 先生)

 ドクターヘリの出動要請は、一般市民の方々が直接行うことはできず、119番通報を受けた消防署がドクターヘリに対して出動を要請します。このため、脳梗塞発症時の初期対応としては、119番通報の内容が大変重要となります。そして、脳梗塞の患者さんを取りこぼさないように、当センターのドクターヘリの出動要請は、「キーワード方式(同時要請方式)」が採用されています。これは、119番通報の内容の中で緊急度、重症度が高いことが予想される一般市民の言葉を47個抜き出し、通報の中にこの言葉が含まれればドクターヘリを要請するシステムです。たとえば、「突然倒れた」「右か左に麻痺がある」「呼びかけに反応がない」「ろれつが回っていない」「様子がおかしい」などのキーワードが含まれる事案に対して、救急車と同時にドクターヘリに出動要請するように消防署に依頼をしています。

 ドクターヘリには、患者さんの他に医師、看護師、操縦士、整備士が搭乗します。治療までの時間を短縮するためにも、病院搬送前に患者さんに対する早期の脳血管治療の必要性を判断することが大切です。つまり、病院搬送前に脳梗塞かどうかを見極める必要があり、このためにドクターヘリ搭乗者や救急隊員はCincinnati Prehospital Stroke Scale(CPSS)というスケールを活用しています。まず、顔面が左右対称であれば正常、片方が引きつっていれば異常です(顔の歪み)。また、開眼させて両側上肢を挙上してもらい、両方上がれば正常、片側がもう片方に比べて上がらなければ異常と判断します(上肢挙上)。さらに、スムーズに話ができれば正常、ぎこちなさがあれば異常とみなします(構音障害)。この3項目のうち1つでも異常が認められれば脳梗塞を疑います。加えて、緊急度や重症度の高さを判断する必要があり、Air way(気道)、Breathing(呼吸)、Circulation(循環;心拍や血圧)のABCが安定しているかどうかを見極めます。そして、病院に搬送されると救急医、神経内科医、脳神経外科医が集まり、患者さんへの対応を迅速に決定することになります。

 なお、当院では搬送中にドクターヘリの医師や救急車の救急隊員から脳卒中の疑いという情報が発信されると、自動的に神経内科医や脳神経外科医、検査技師などのスタッフが招集され、ここに患者さんが到着してくるというシステムが構築されています。

2.来院から再開通までの時間短縮への取り組み
(今堀 太一郎 先生)

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図3 経験症例数別来院後の時間経過

 当院では、急性脳主幹動脈閉塞に対して2015年4月から血管内治療を開始し、年間約60件の患者さんに対して施行しています。そこで、血管内治療を行った100例目までの来院後の時間経過についてデータをまとめてみると、症例数を重ねても、経時的に来院から再開通までの時間が短縮しているとは言い難い状況が明らかとなりました(図3)。最初の25例目までは、来院からCT室への入室までの所要時間は4分、CT撮影が29分、MRI撮影が58分と続き、大腿動脈穿刺から再開通までは46分でしたが、76~100例目では、大腿動脈穿刺から再開通までの時間が31分まで退縮されたものの、CTの撮影時間が43分に増え、来院から大腿動脈穿刺までは90分、再開通までは120分を要していました。来院から大腿動脈穿刺までは60分を目標としている施設が多い中で、当院でもまだまだ時間短縮の努力が必要だと考えています。

 当院では病院搬送前の連携体制がしっかりしているため、来院から数分でCT撮影に入ることができます。しかし、そこから画像診断で約90分間の時間を要しているところに課題があるように思います。そこで、画像診断の時間短縮をターゲットとした取り組みが必要ではないかと考えているところです。血管内治療を行う際には、CTで早い段階の虚血性変化が捉えられ、MRIの拡散強調画像を使えば梗塞範囲の解析なども可能となります。一方で、再開通までの時間は短いほど良いため、緊急検査時にCT とMRI のどちらを用いるかについては、各施設のプロトコールに委ねられています。当院のプロトコールでは、血管内治療の際にはCT画像を撮り、その後にMRI検査を行うことが定められています。しかし、時間短縮のためにはMRI検査をスキップする方法もあるのではないかと考えています。実際に、大規模な血管内治療施行施設では、最近はCTのみで病変を判断している施設が増えていると聞いています。今後、院内でも十分に議論を重ねながら、結論を出していきたいと思っています。

また、大腿動脈穿刺から再開通までの約30分の時間をこれ以上縮めることができれば理想的ですが、おそらくこれ以上の大幅な手術時間短縮には限界があると思われます。また、血栓回収を施行可能な治療医を増やすために、チーム全体として手技を行うような取り組みも必要ではないかと考えています。