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ONE PATHOS
インタビュー Vol.6
堺エリア
Ⅰ.馬場記念病院における急性期梗塞治療の特徴

社会医療法人ペガサス馬場記念病院
脳神経外科副部長・救急部部長

宇野 淳二 先生

24時間365日いつでも脳神経外科医が対応。
馬場記念病院における迅速・安全な急性期脳梗塞治療のための取り組み

 馬場記念病院の脳梗塞患者数は大阪府内で屈指と言われます。年間の患者数はどのくらいですか?

 平成28(2016)年度に馬場記念病院で治療を行った発症後3日以内の急性脳梗塞患者数は709件でした。
 急性脳梗塞患者の多くは救急隊によって搬送・来院される患者さんで、当院でも脳梗塞患者の半数以上は救急搬送されて来院された患者さんです(表1)。

fig1

 多くの救急搬送患者さんを受け入れるために、どのような脳梗塞救急医療体制を構築されているのでしょうか?

 急性脳梗塞の急性脳梗塞治療は時間との戦いです。当院は、緊急検査、手術、集中治療まで一貫した救急医療体制を整備し、24時間365日、救急患者の完全受け入れを徹底しています。急性脳梗塞についても365日いつでも急性脳梗塞治療を迅速に実施できるように、専門チームが常に待機し、治療にあたるシステムを構築しています。これが、当院の急性脳梗塞治療の特徴の一つです。
 当院には脳神経外科医が8名在籍しており、またSCU(脳卒中集中治療室)*もあり、休日・夜間も必ず脳神経外科医が当直しています。私も、ほとんどいつも院内におります。こうした体制によって、急性脳梗塞に対して24時間365日いつでも脳神経外科医が初療から治療にあたっています。
 こうした救急医療体制により、脳神経外科の救急搬送応需率はほぼ100%となっています(表2)。

fig2

 治療を迅速に開始するために、どのような工夫をされていますか?

Dr.uno

 大阪府では、スムーズな救急搬送を支援するために、スマートフォンを用いた救急搬送支援・情報収集・集計分析システムであるORION(Osaka emergency information Research Intelligent Operation Network system)を構築しています(図1)。このシステムに蓄積されているデータは救急隊員による傷病者の病態や緊急度の判定に役立つほか、あらかじめ登録されている救急告示医療機関の中からその傷病者に対応できる施設がスマートフォン上に一覧として掲載されます。救急隊員はスマートフォン上に掲載された施設に連絡し、受け入れの可否を問い合わせます。ORIONを利用することで、救急隊は脳梗塞が疑われる患者さんをいち早く専門施設に搬送することができます。
 また、当院は2008年から救急隊が当院の脳神経外科医へ直接連絡できる「脳卒中ホットライン」を設置しています。これにより、患者搬送中に救急隊員が患者さんの病状などを脳外科専門医に直接伝えることで、来院前から施設内での受け入れ準備を進めることができます。

図1:ORION(Osaka emergency information Research Intelligent Operation Network system)

table1

 馬場記念病院における急性脳梗塞の診断・治療の流れをご紹介ください。

 急性脳梗塞治療では迅速で正確な診断が重要です。他の疾患との鑑別が難しい場合もありますが、当院では夜間・休日も初療から脳神経外科医が治療にあたり、神経学的所見や造影CT検査で脳梗塞を診断します。なお、造影CT検査ではCTアンギオグラフィで梗塞部位を検索するとともに、CT灌流画像で脳灌流を評価します。造影CT検査は、当直の診療放射線技師に加えて、もう1人、診療放射線技師をオンコールで呼び出して2名で行いますが、検査を迅速に開始できるように、呼び出し中も当直が準備を進めます。
 脳梗塞治療では適応があれば、t-PA治療が標準治療です。そのため、t-PA治療の適応を慎重に判断した後、来院後30分以内にt-PA治療を開始します。内頸動脈など脳主幹動脈が閉塞している場合、t-PA治療の効果は比較的低いことが分かっています。そこで、当院ではt-PA治療と並行して血栓回収療法を行います(来院後60分以内)。
 なお、血栓回収療法では術者はモニターに映し出されるカテーテルの先端に注意が集中しがちです。血栓回収療法を安全に行うために、当院では必ず複数の医師で行っています。

*SCU(脳卒中集中治療室):SCUとは、専従の専門医療スタッフが持続モニター監視下で、急性期脳卒中患者に対して濃厚な治療と早期からのリハビリテーションを計画的かつ組織的に行う脳卒中専門病棟で、表3のような施設基準が設定されています。なお、脳卒中治療ガイドラン2015では、くも膜下出血やラクナ梗塞、深昏睡、発症前のADLが不良な場合を除く脳卒中急性期の患者をSCUで治療することで、t-PA療法の施行率の上昇や死亡率および再発率の低下、在院期間の短縮、自宅退院率の増加、長期的なADLとQOLの改善を図ることができると、グレードAで推奨しています。

table3