uno2

ONE PATHOS
インタビュー Vol.6
堺エリア Ⅱ.血栓回収療法の適応時間が延長されても、早めの治療が重要

社会医療法人ペガサス 馬場記念病院
脳神経外科副部長・救急部部長

宇野 淳二 先生

 急性脳梗塞の治療法を解説してください。

 経皮経管的脳血栓回収用機器適正使用指針の主幹動脈閉塞による急性脳梗塞では、適応条件を満たす場合には血栓回収療法を行うことがグレードAで強く推奨されると記載されており、血栓回収療法が標準治療となっています。
 当院では、平成28(2016)年度は52名の脳梗塞患者さんに対して血栓回収療法を行っており、2010年から施行した血栓回収療法は300件を超えています(図2)。

fig2

 2018年5月に、経皮経管的脳血栓回収用機器適正使用指針の第3版が公表され、血栓回収療法の適応時間が延長しました(1)。しかし、血栓回収療法をできるだけ早く施行して迅速に再開通を図ることは、引き続き重要です。当院では、病院到着から1時間以内に大腿部穿刺を行うことを目標としており、再開通率は87%、来院時mRSスケール2以下の症例における転帰良好例の割合は49%と、良好な治療成績を収めています。

 血管回収療法の適応判断では、どのような指標が重要ですか?

 血栓回収療法の適応時間延長に伴って、経皮経管的脳血栓回収機器適正使用指針第3版は、発症からの時間と虚血コア体積から血栓回収療法の推奨グレードを記載しており、血栓回収療法の適応判定において虚血コア体積の評価が重要となっています(図3)。

fig3

 CT検査はMRI検査に比べて迅速に施行できることから、今後わが国でもCT灌流解析ソフトの導入が進み、従来のMRIベースの診断に替わって、CTベースの診断が主流になるのではないかと考えています。

 一刻も早く血栓回収療法を行うために、どのような工夫をされていますか?

 当院は24時間365日いつでも専門スタッフが急性脳梗塞治療にあたる体制を20年以上前から構築しています。血栓回収療法も第一世代デバイスが承認された2010年から行っていますので、院内の実施体制や脳卒中治療に携わる看護師などのブレインチームの教育・研修体制は確立していますが、迅速に対応できるよう常々スタッフに話しています。また、血栓回収療法を行える若手医師の育成にも力を入れています。

 急性脳梗塞患者さんにできるだけ早く治療を行うには、救急隊員の協力も不可欠で、当院では救急隊員もブレインチームの一員と位置づけています。血栓回収療法など急性脳梗塞治療は日進月歩で進化しており、新しい情報を救急隊員に紹介することも、急性脳梗塞治療の改善に欠かせません。そこで、当院では救急隊員に搬送患者さんの病態や治療内容などを説明するとともに、ブレインチームの知識・技能向上のために脳疾患の症状や治療法を学ぶ「脳疾患ミニ勉強会」に救急隊員も参加していただいています。また、堺市消防局で開催される救急隊員の教育プログラムにも積極的に協力しており、当院の脳神経外科医が堺市消防局管内の全救急隊を半年に1回のペースで訪問して、症例検討会や講演、集中講義を行っています。さらに、救急隊員が脳卒中治療に理解を深め、日頃の救急活動に役立てられるように「脳卒中救急搬送ガイド(パンフレット)」を作成・配布するなど、さまざまな角度から地域の救急活動のレベルアップを支援し、また救急隊員との交流・連携を深めています。

Dr.uno

 堺エリアにおける急性脳梗塞治療の現状や課題をどのようにお考えでしょうか?

 現在、前方循環系の脳梗塞では血栓回収療法が標準治療となっています。また、従来は急性脳梗塞患者さんをt-PAが施行可能な施設に搬送した後、血栓回収療法を施行できる施設に搬送するdrip and shipが有用といわれていましたが、今日では血栓回収療法を施行できる施設に直接搬送したほうがよいといわれています。しかし、全国的に血栓回収療法の専門医は少ないのが現状です。堺市エリアでも血栓回収療法を施行できる施設は少なく、また地域的に偏在しています。
 そのため、堺市における急性脳梗塞患者さんの救急搬送システムをどのようにするかが今後の課題となっていると、私は考えています。この課題解決には難しい面もありますが、患者さんに一刻も早く標準治療を行うために、より良い救急搬送システムが構築されることを願っています。