2020年11月12日
日本メドトロニック株式会社

日本メドトロニック
経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)用デバイス 
「Evolut™ PRO+ システム」の販売を開始

大動脈弁狭窄症患者さんの血行動態改善と 
血管径の小さい患者さんに対しても経大腿動脈によるTAVI治療の提供を実現

 

日本メドトロニック株式会社(本社:東京都港区)は、重度大動脈弁狭窄症の患者さんを対象とした経カテーテル的大動脈弁置換術(以下、TAVI)用デバイス「EvolutTM PRO+(エボリュート プロプラス)システム」(以下、Evolut PRO+ )の販売を2020年10月5日より開始しました。

Evolut™ PRO+ システム

Evolut™ PRO+ システム(医療機器承認番号: 30200BZX00272000)

大動脈弁狭窄症は、心臓の中にある弁のうち、酸素を含んだ血液を全身へと送り出す際の出口にあたる大動脈弁が、加齢や動脈硬化により硬くなって十分に開かず、血液の流れが妨げられてしまう病気です。日本における大動脈弁狭窄症を含む心臓弁膜症の潜在患者数は、推定200~300万人といわれています1)。従来の大動脈弁狭窄症の治療法(薬物治療、外科的治療、バルーン大動脈弁形成術)に加えて、日本では2013年から治療の選択肢に加わった「TAVI」は、胸を開かず心臓が動いている状態のまま、大腿動脈等を経由してカテーテル(細い管)を心臓に通し、人工弁(生体弁)を患者さんの心臓に植え込む治療法です。

Evolut PRO+ は、Evolut RおよびEvolut PRO の後継製品で、自己拡張型の生体弁によって大動脈弁狭窄症の患者さんの血液が全身へ十分に流れるよう血行動態(動脈・静脈・心臓内の圧力や血流量など)の改善を助けるほか、摩擦軽減のためにデリバリーカテーテルシステム先端のカプセルにPTFE製カプセルライナーを採用することで23/26/29mm用デリバリーカテーテルシステムのプロファイル(サイズ)の低減を実現し、血管径の小さい方が多い日本の患者さんにも使用しやすくなりました。さらに Evolut PRO+ には、機能不全に陥った外科生体弁に対するTAVI(TAV in SAV)の適応が追加されました。TAV in SAVは再置換が必要となった外科生体弁の中にカテーテルで新しい生体弁を植え込むことで、弁機能を改善することが期待できる治療法です。大動脈弁閉鎖不全症や大動脈弁狭窄症の治療のために外科手術で植込まれた生体弁の耐久性は10~20年2)とされており、石灰化や摩耗によって劣化し、再び弁置換術が必要となった場合に、TAV in SAVが採用されることがあります。

大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科 教授 澤 芳樹 医師は、「TAVI治療の普及と成熟に伴って残された課題も徐々に少なくなってきましたが、さらなるTAVI治療の安全性と有用性を実現していくにはTAVIデバイスの進化が欠かせません。Evolut PRO+は従来のEvolut PROの特長、特にアウタースカートの追加によって自己弁輪との接触面積が増加したことによるPVL(弁周囲逆流)の抑制は維持したまま、さらなるロープロファイルを実現したという点はTAVI治療の安全性の向上に貢献できると考えています。」と述べています。

湘南鎌倉総合病院 総長 循環器科主任部長 齋藤 滋 医師は、「日本人の大動脈弁狭窄症患者さんは、欧米の方と比べて、心臓やカテーテルを挿入する動脈の径が小さいという特徴があります。Evolut PRO+ は、以前より用いられているEvolutシリーズの特徴である、ニチノール製自己拡張型フレームを用いることによる自己弁輪形状への追従性、スープラアニュラーデザイン(生体弁の弁口部分が自己弁よりも高い位置に設計されているデザイン)による大きな有効弁口面積の確保、そしてアウタースカート(生体弁のフレームの外側下部を覆っている生体組織)によるPVL(生体弁外側からの逆流)抑制を保ちながらも、細い外径を実現した製品です。このため、Evolut PRO+の登場はさらに多くの日本人の大動脈弁狭窄症患者さんに対するTAVI治療に寄与することでしょう。」と述べています。

【製品の特長】

①    良好なシーリング
Evolut PRO 生体弁の外側のアウタースカートは、PVLのさらなる抑制の可能性が示唆されています3)。またEvolut PRO+ では、全てのサイズの生体弁にアウタースカートが追加され、シリーズ全体の特徴である良好なシーリングを提供することが期待されます。

②    Evolut RおよびPROの特長と実績を継承
ニチノール製自己拡張型フレーム、自己弁輪固有の形状に影響されることなく生体弁の弁尖部分で真円を描きやすく、広い弁口面積と適切なコアプテーション(弁尖の接合)を確保できるスープラアニュラー生体弁(図1)、リキャプチャー(再収納)機能を搭載したデリバリーカテーテルシステム、細い血管にも挿入可能なロープロファイルなど、従来のEvolut RおよびPRO で実績を積み重ねてきた特長を引き継いでいます。

図1 スープラアニュラー生体弁

                                                                      図1 スープラアニュラー生体弁
患者さんご自身の大動脈弁の位置よりも高い位置(スープラアニュラーポジション)にて機能するため、より広い弁口面積を確保することができ、よりスムーズな血流の再現と血行動態の改善が期待されます

③   細い血管の患者さんに対応
Evolut PRO+ のスープラアニュラー生体弁はデリバリーカテーテルシステムを通じて留置され、適応のある最小血管径は5.0mm以上です4)。InLine™(インライン)シースと呼ばれる、デリバリーカテーテルと一体型のイントロデューサシースを用いることにより、細い血管にも挿入可能なロープロファイルを実現し、血管径の小さい患者さんに対しても経大腿動脈によるTAVI治療の提供を可能にします。日本では、患者さんのサイズに適した生体弁サイズ(23mm、26mm、29mm、34mm)の選択が可能です。

メドトロニックは、第一線の臨床医、研究者や科学者と連携し、心血管疾患及び不整脈等のインターベンションや外科手術における革新的技術を幅広く提供しています。また、世界各地の患者さんと医療従事者に臨床的、経済的価値をお届けできる製品とサービスを提供すべく、努力を続けてまいります。

【大動脈弁狭窄症について】
心臓弁膜症の一つで、心臓の中にある弁のうち、酸素を含んだ血液を全身へと送り出す際の出口にあたる大動脈弁が、加齢や動脈硬化によって変化が起きて硬くなり、十分に開かなくなる病気です。軽症のうちは症状がほとんどありませんが、重症になると十分な血液が全身に流れなくなるため、胸の痛み(胸痛)や息切れ、動悸、むくみなどの心不全の症状や失神などの症状が発現し、症状が進行すると突然死に至る場合もあります。薬による内科的な治療で病気の進行を抑えますが、症状が進行して重症になると外科的治療が必要となります。日本における大動脈弁狭窄症を含む心臓弁膜症の潜在患者数は、推定 200~300 万人といわれています1)

1

米国の弁膜症有病率5) を日本の 18 歳以上の人口にあてはめて算出

2

日本循環器学会/日本胸部外科学会/日本血管外科学会/日本心臓血管外科学会合同ガイドライン, 2020年改訂版 弁膜症治療のガイドライン

3

Forrest JK, Williams MR, Popma JJ, et al. 30-Day Outcomes Following Transcatheter Aortic Valve Replacement With the Evolut PRO Valve in Commercial Use: A Report from the STS/ACC TVT Registry™. Presented at TCT 2018; San Diego, CA.

4

23mm、26mm、29mm用デリバリーカテーテルシステムの最小アクセス血管径

5

Nkomo, et al., Burden of valvular heart diseases: a population-based study. Lancet. 2006; 368: 1005-1011

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