【2021年9月1日更新】
出典2の記載に誤りがありました。謹んでお詫びし、訂正いたします。
誤)McElhenny et.al SCAI2020発表データ
正)Thomas K. Jones et al. SCAI 2021発表データ

2021年8月27日
日本メドトロニック株式会社

日本メドトロニック 日本初の経カテーテル肺動脈弁専用デバイス
「Harmony™ 経カテーテル肺動脈弁システム」の薬事承認を取得

―生涯にわたり繰り返し開胸手術を必要とする先天性心疾患の患者さんに
より低侵襲な治療選択肢を提供―

 

日本メドトロニック株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:ロブ サンドフェルダー)は、先天性心疾患の術後に起こる肺動脈弁逆流症の治療に用いられる「Harmony™ (ハーモニー)経カテーテル肺動脈弁システム」(以下、Harmony TPV)が8月23日に薬事承認されたことをお知らせいたします。今後、保険診療下で治療を提供できるよう保険適用に向けた手続きを行います。

「Harmony™ 経カテーテル肺動脈弁システム」(承認番号:30300BZX00235000)

「Harmony™ 経カテーテル肺動脈弁システム」(承認番号:30300BZX00235000)

日本では100人に約1人が先天性心疾患を持って生まれています1。近年、小児期の治療成績が向上したことに伴い、乳幼児期に外科手術を受けた患者さんの約90%以上が成人期を迎えると言われています1。成人期を迎えた患者数は、2020年時点で約50万人を超えると見積もられ、今後も増加が見込まれています1

Harmony™ 経カテーテル肺動脈弁システム

生まれて間もなく心臓と肺をつなぐ右室流出路の外科手術を受けた先天性心疾患の患者さんが成人期を迎えることにより、代表的な術後続発症である肺動脈弁逆流症が問題視されるようになってきています。肺動脈弁逆流症は心臓から肺動脈に送り出された血液の一部が心臓に戻ることにより心臓に負担がかかる病気です。そのため、適切に対処されず状態が悪化した場合には、心不全や不整脈、さらには突然死のリスクが高くなると言われています1。肺動脈弁逆流症に対しては、これまで開胸を伴う外科手術しか選択肢がなかったことに加え、生涯にわたって複数回の外科的な治療介入を繰り返すことが想定されることから、より負担の少ない低侵襲な治療選択肢の導入が望まれていました。

Harmony TPVは主に、乳幼児期に自己の右室流出路から肺動脈組織を温存して外科手術を受けた重度の肺動脈弁逆流症の患者さんに対して、カテーテルを通じて肺動脈弁を留置する日本初の専用デバイスです。肺動脈にフィットするように設計・デザインされた2つのサイズの生体弁と、それを心臓内に送達するためのデリバリーカテーテルシステムのセットから構成されます。外科的手術のリスクが高く、本品による治療が最善であると判断された場合、負担の大きな開胸手術の代わりに、カテーテルに格納された生体弁を、太ももまたは首の小さな切開を介して送達し、心臓の内部に直接留置します。これにより、生涯における開胸手術の回数の減少、入院期間の減少及び術後早期の社会復帰などが期待されます。

Harmony™ 経カテーテル肺動脈弁システム

Harmony TPV臨床試験の結果2が2021年4月に米国のSociety for Cardiovascular Angiography & Intervention (SCAI)にて発表され、本製品の植込みは68名中67名で成功し、手術後1年経過したすべての患者さんにおける肺動脈弁逆流の程度は、「なし」もしくは「わずか」であったと報告されています。また、術後1年までの死亡及び外科的な再手術の報告はありません。

Harmony TPVは、産官学の共同プロジェクトであるHarmonization by Doing (HBD) for Childrenプログラムに基づき、製品開発が難しいとされる小児領域において日本を含む国際共同治験が行われ、国内で初めて承認を取得した例となります。なお、本品は2020年12月に厚生労働省より希少疾病用医療機器として指定を受けております。

日本先天性心疾患インターベンション学会理事である昭和大学病院小児循環器・成人先天性心疾患センター長 富田英特任教授は、「右室流出路再建術を受けた先天性心疾患の典型的な患者さんは、肺動脈弁の問題に継続的に対処するために、生涯にわたって複数回の開心術が必要になります。生涯に渡り必要となる術後フォローアップや外科手術は、患者さんにとって、身体的・精神的あるいは経済的に大きな負担となり、就業や雇用の維持、収入、妊娠・出産、子供の養育、親の介護、老後の生活など各ライフステージにおける日常生活に大きな不安と影響をもたらしています。本品は、そういった患者さんに対してより低侵襲な治療オプションを与えるものであり、より適切な時期に、より患者さんに負担の少ない治療を提供できる可能性をもつ、非常に革新的な治療法として期待できます」と述べています。

ストラクチャルハートのシニアダイレクターである俣野大輔は、「Harmony TPVは、重度の肺動脈弁逆流症の患者さんにとって日本初のカテーテルを用いた肺動脈弁置換専用の製品になります。現在、構造的心疾患に対する治療戦略は、外科手術だけではなく、より低侵襲な治療として経カテーテル治療が広がってきております。しかし、肺動脈弁逆流症に対する弁置換術の治療オプションは非常に限られており、今回我々はその領域でより低侵襲な治療製品Harmony TPVの承認を得ることができました。世界では、米国に続き二か国目として承認されたことを嬉しく思います。我々は、さまざまな先天性心疾患の患者さんが経カテーテル技術を通じて低侵襲な治療を受けられるようになることを目指しています。人々の痛みをやわらげ、健康を回復し、生命を伸ばすという会社のミッションのもと、患者さんおよび医療従事者の方々に臨床的および経済的価値を提供していきたいと思います」と述べています。

Harmony TPVは、米国食品医薬品局(FDA)において患者が特定の救命技術にタイムリーにアクセスできるようにすることを目的とした承認制度であるBreakthrough Device Designation(画期的医療機器/デバイス指定)を受け 、2021年3月に米国で承認されました。

【術後続発症とは】1
術後続発症は先天性心疾患に対する外科手術に伴って術後成人期に偶発的あるいは必然的に発生する異常といわれています。続発症が進行すると 生活の質(QOL) を低下させ、不整脈、心不全を生じ、内科治療や再手術を含む開胸手術が必要となる場合があると言われています。続発症の進行には個人差があるため、長期に渡る継続的な経過観察が必要と言われています。

【肺動脈弁逆流症(肺動脈閉鎖不全症)とは】3
肺動脈から右室へ血液が逆流する疾患です。ファロー四徴症に代表される右室流出路に対する外科手術後に起こることが多く、まれに先天的なものもあります。臨床症状は、重度になるとむくみや体重増加、食欲不振といったような右心不全の症状を呈し、人工弁に置き換えるための開胸手術が行われることもあります。

【Harmonization By Doing(HBD)for Childrenプログラム】4
HBD(Harmonization By Doing)は、日米両国の産官学が協力し、臨床試験や承認審査の実践を通して、日米における医療機器規制の調和を図る活動です。循環器領域の医療機器を中心として、米国FDAとの意見交換を行いながら、国際共同臨床試験の推進、日米間で協力して審査を実施する体制の構築、効率的かつ迅速な審査を進めるための施策の検討を行い、我が国としては、医療機器承認のタイムラグの改善を図ることを目指しています。

1

市田ら、成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017年改訂版)

2

Thomas K. Jones et al. SCAI 2021発表データ

3

小児慢性特定疾病情報センター 92 肺動脈閉鎖不全症 https://www.shouman.jp/disease/details/04_63_092/

4

PMDAホームページ HBDのページ https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/hbd/0015.htmlより抜粋

ニュース一覧

これまでに公開したプレスリリース、お知らせ、特集記事をご覧いただけます。

日本法人 公式SNS