心臓弁膜症の治療

大動脈弁狭窄症の治療

大動脈弁狭窄症の治療は、重症度によって異なります。

 薬物治療(軽症の場合)

お薬で症状をおさえます。お薬を飲まずに、様子をみることもあります。
薬物治療は、悪くなった弁を元に戻す治療ではないため、重症化すると、「外科的治療」や「経カテーテル的大動脈弁植込み術(TAVI)」による治療が必要になります。

大動脈弁狭窄症の薬物治療に使われる主なもの

種類 はたらき
強心薬 心臓の収縮力を高め、血液が全身にいきわたる手助けをします。
利尿薬 体内の余分な水分を尿として出し、心臓にかかる負担を減らします。
血管拡張薬 動脈や静脈を広げて、心臓にかかる負担を減らします。
抗血液凝固薬 血栓(血の塊)ができないように、血液を固まりにくくします。
降圧薬 心臓から送り出す血液の量を減らしたり、血管を広げて、血圧を下げます。
抗不整脈薬 心臓のリズムを整えます。

外科的治療〈大動脈弁置換術〉(重症の場合)

開胸して、悪くなっている心臓の弁を人工弁(機械弁や生体弁)に置き換える治療を行います。どちらの人工弁を使うかで、手術後の生活が変わってくるので、ライフスタイルや年齢に合った人工弁を選択します。

外科的治療に使われる人工弁(機械弁)

素材 金属(パイロライト・カーボン
やチタンなど)
耐久性 20 ~ 30年(ほぼ一生涯)
手術後の抗血液凝固療法※

弁のまわりに血栓ができやすい

生涯にわたって抗血液凝固療法を行う

外科的治療に使われる人工弁(生体弁)

素材 牛または豚の心臓からとった組織
耐久性 10 ~ 20年
手術後の抗血液凝固療法※

弁のまわりに血栓ができにくい

抗血液凝固療法は手術後2 ~ 3 ヵ月程度(病院によって異なります)

※抗血液凝固療法:血液が固まらないようにする治療。抗血液凝固薬や抗血小板薬を服用する。

重症で、外科的治療ができない場合

バルーン大動脈弁形成術

バルーン(風船)を使って、狭くなった血液の通り道を広げます。一時的に症状は改善しますが、再び狭窄してしまう可能性があります。

経カテーテル的大動脈弁植込み術(TAVI)

開胸せずに、カテーテル(細い管)を使って、人工弁(生体弁)を心臓の中に植込む治療法です。主に外科的治療が困難な場合に選択されます。日本では2013年に保険適用となった比較的新しい治療で、長期成績についてエビデンスはまだ不足しています。