退院後は当初の予定通り、半年後の留学を目標に掲げました。気持ちを切り替えて復学したのも束の間、人目のつく場所でインスリン注射や血糖測定をしていると、周りからジロジロと見られていることに気づいたのです。当時は今よりも1型糖尿病に対する認知が低く、「若いのにかわいそう」「痩せているのに糖尿病になるんだ」など、相手にとっては特に悪気がない言葉が、私にはナイフのように突き刺さりました。次第に周囲の偏見の目が気になり、大学では人目を避けて、血糖値測定やインスリン注射をするようになっていました。
転機となったのは、留学先のアメリカで様々な人種や文化、多様性に触れ、自分らしく生きようと思えたことです。
アメリカでは1型糖尿病に対して興味を持って、話しかけてくれる学生さんが多くいらっしゃいました。ある人から「1型糖尿病は君の個性だね」と言ってもらったことを機に、改めて病と向き合うことができ、私自身の生きる姿勢が変わったのです。不思議なもので、1型糖尿病を自分の個性として受け入れてからは、注射をする姿を誰に見られようと全く気にならなくなりました。
日本ではネガティブに捉えられることが多かった病気やハンディキャップを、その人の個性とリスペクトする人たちと出会えたことは、「病気を隠さずに挑戦し続ける」私の生き方の原点です。