肺動脈弁逆流症 はいどうみゃくべんぎゃくりゅうしょう

監修:
埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓外科 鈴木 孝明 先生
昭和大学病院 小児循環器・成人先天性心疾患センター 富田 英 先生
東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科 原 英彦先生

肺動脈弁逆流症とは?

肺動脈弁逆流症では、肺動脈弁において逆流 が生じ、右心室に逆向きに血液が漏れる状態 となっています。肺動脈弁逆流症は先天性心疾患の術後、 成人期に問題となる続発症では高頻度に みられるもので、逆流が重度の場合は、肺動脈 弁の置き換え(肺動脈弁置換術)を勧められる ことがあります

肺動脈弁位における閉鎖不全(逆流)

肺動脈弁逆流症の心臓への長期的な影響

肺動脈弁逆流症では、右心室へより多くの血液が流れ込み(容量負荷の増大)、右心室が本来よりも多くの血液 を送り出さなければならなくなっています。そのため右心不全が進み、長期的には以下のようなことが 考えられます

右心室の肥大 イラスト

1. 代償的に右心室の心筋が厚くなる(右心室の肥大)

左心室の肥大 イラスト

2. 拍出量維持のために右心室が拡大する。その影響は中隔を通して左心室にも及ぶ

不整脈や突然死のリスク イメージ

3. 不可逆的な右心室心筋の変化(線維化)などにより心機能が低下し、不整脈や突然死のリスクが増加

新しい弁が必要となる可能性のある症状(右心不全)

  • 体を動かした時の疲労感や息切れ
  • 四肢のむくみ、めまい、または体力低下
  • 心拍数や心拍リズムの不整、または心臓がバクバク、ドキドキしている感覚(動悸)
  • 失神またはそれに近い症状

症状は軽度のものから重度のものまでさまざまです。 また、症状を自覚しないまま右心不全が進行していることもあります。 このような症状がある場合は、早めに主治医にご相談ください。 また、定期的な診察と検査により、心臓の状態を把握しておくことが大切です

外科的肺動脈弁置換術

  • 従来行われており、臨床的エビデンスが揃っている
  • 開胸が必要
  • 退院まで期間が必要な場合が多い

経カテーテル肺動脈弁留置術(TPVI)

  • 外科手術に比べて歴史は浅く、新しい治療方法
  • 開胸の必要がなく、多くの場合、大腿部の静脈 からカテーテルを挿入し治療を行う
  • 開胸の必要がないため、手術時間が短く、また、退院までの期間も短くて済む場合が多い

肺動脈弁置換術に期待される効果

  • 肺動脈弁機能の回復
  • 生活の質(クオリティ オブ ライフ)の向上
  • 適切なタイミングで治療を行った場合、右心室機能 が回復

経カテーテル肺動脈弁留置術(TPVI)

本サイトの内容は、医師の診察に代わるものではありません。病状や治療に関しては、必ず主治医の診断を受けてください。